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日本酒とは

生産地について

日本酒の製造元、酒蔵は現在日本国内に1400社以上あります。
古くから、地酒を造る蔵はその地域で愛される、その地域の料理に合わせた酒造りがされていました。
流通網の発達した現在では、各地のお酒は全国各地で飲まれているため、地酒の造り方は全国の嗜好を意識したものに変わりつつありますが、今なお、地域に根ざした酒蔵では、その地域の酒造りの特色を感じることが出来ます。

東北地方、特に雪深い地方では濃い味付けの料理が多く、日本酒の味わいも濃厚でやや甘口のお酒が多く造られていました。

秋田名物いぶりがっこやしょっつる鍋、山形名物いも煮などと合わせて地元産の日本酒を。
日本一酒蔵の数が多い新潟県では、日本海で捕れる魚の刺身や能登でとれるエビやカニと合わせて旨い淡麗辛口な日本酒を。

その地方ならではの味わいを旨い肴と合わせてお愉しみ下さい。

精米歩合とは

精米歩合とは「精米後の白米の、もとの玄米に対する重量の割合」、結局そのお米がどれだけ磨くかを表す数値です。

精米歩合40%とは、お米の周りを60%も削っているという事になります。

日本酒の原料のお米は、心白と呼ばれる米の中心部を使うことで雑味の無いお酒を造りだすことができるので日本酒の製造工程で米の表面を磨く精米過程は欠かせない作業です。

ちなみに、ご飯として食べる食米の精米歩合は90%です。お米の外側にはタンパク質や脂質が多く含まれます。
タンパク質は旨み成分といわれるアミノ酸の元となります。そのため、タンパク質の多い外側の部分を多く残すほど味が濃厚になり、外側の部分を多く磨きとるほど、すっきりとした味わいになります。

精米歩合が60%以下ですと吟醸酒・純米吟醸酒とよばれ、50%以下では大吟醸酒・純米大吟醸酒と言われます。

精米歩合が低いほど、多くのお米を削りますので、その分原料が多く必要になりお酒の値段も高くなります。
ただし、値段が高いからといって、多く削った大吟醸ほど良いお酒かというとそうではなく、米の旨みのしっかりしたお酒が飲みたい場合はあまり磨かない純米酒を、すっきりと綺麗で華やかな香りのお酒が飲みたい場合はよく磨かれた大吟醸酒を、というように、お好みや気分、合わせる料理等によって、選択をしていただきたいと思います。
お米の磨きの違いで味わいがどう変わるのか、まずは是非飲み比べて味わいの違いを愉しんで下さい

酒造好適米とは

日本酒の原料となるお米「酒造好適米」は、普段口にしている食用米とはちょっとした違いがあります。
まずは外観、食用米と比較すると粒の大きさが違います。表面を磨くため粒が大きいお米が使われます。
お米の中心には「心白」と呼ばれる部分があります、この心白にはタンパク質の含有量が少なく、磨いても砕けないよう粘度が高く、醪によく溶けるという性質があります。

酒造好適米にはこの心白の占める割合が食用米より大きいのです。食用米に含まれるタンパク質や脂質は食べる際には旨みになりますが、お酒になると苦味や雑味として現れてしまうのです。

その酒造好適米の中でもとくに有名な「山田錦」と「五百万石」で造られたお酒を飲み比べて下さい。
「山田錦」は酒造好適米の王様と言ってもおかしくない程です。
生産地は主に兵庫県で、他には徳島県で「阿波山田錦」として造られています。
「山田錦」で造られたお酒は香りがよく、ふくらみと厚みのある味わいになります。
「五百万石」は山田錦に次ぐ二大好適米で、新潟県が主な産地です。新潟県の気候風土に適した栽培特性を有し、新潟県のお酒特有の淡麗でスッキリとした味わいに仕上がります。

日本酒度とは

日本酒度とは簡潔に言うと日本酒の比重を表しています。日本酒度は専用の比重計で測ります。
数値がマイナスですと甘口でその数値が大きくなると甘くなります。
数値がプラスならば辛口で、その数値が大きくなれば辛くなります。

なぜお酒の比重で味が変わるのかと言うと、ぶどう糖濃度が日本酒の重さで分るからです。ぶどう糖は水より質量が多いため、日本酒度がマイナス(重い)ほど、ぶどう糖が多く含まれています。また、アルコールは水より比重が軽いため、アルコール分が多いほど、日本酒度は+に近づきます。

日本酒の「醗酵」は糖をアルコールに変える働きなので、日本酒度が高いほど、よく醗酵が進んでいる、多くの糖をアルコールに変えているということがわかります。
そのため、一般的に
日本酒度の高いもの=糖が多く残っていて甘い
日本酒度の低いもの=糖が少なく辛口
と判断されます。

しかし、
・糖が多くても、酸味が強いと甘さを感じにくくなる
・糖が少なくても、香りが甘いと甘口に感じる
・糖意外にも比重をマイナスに傾ける成分がある
・糖の中にも、甘みを感じやすい糖、感じにくい糖がある
など、この数字だけで判断すると、イメージと違ってしまうことがあります
この数字は日本酒醸造において重要な指標ですが、一概にこの数字だけでは判断できないことも理解して頂ければと思います。

「ひやおろし」とは

ひやおろしが誕生したのは江戸時代
極寒の冬の時期に搾られたお酒の鮮度や味が劣化しないように、春先に一度火入れ(加熱殺菌)したものを大桶に貯蔵したままひと夏を越し、2度目の加熱殺菌をしない「冷や」を大桶から樽に「卸し」出荷する醸造方法の意味を込めて「ひやおろし」と名付けられたお酒です。

春先に一度加熱処理をすることで、長期の熟成をしても安定した酒質を保つことが出来ます。

また、最近の研究では、加熱処理をしたお酒は、していない生酒よりも、貯蔵による雑味の低下が早いということがわかっています。

通常、出荷前に行われる加熱殺菌をしないことで、ひと夏の熟成によって生まれる深い香り・味わいを極力崩さず、そのままの状態で楽しんで頂けます。

暑い夏、涼しい温度で保たれた酒蔵で眠り熟成を深めながら、秋の訪れで目覚めることから、秋の気候、味覚にピッタリの穏やかで落ち着いた香り、舌触りは滑らか、なのに濃密なとろみが特徴のお酒として愛好家に好まれています。

ここ数年は特に人気が高く、多くの酒蔵から商品化され、ラインナップも増えてきております。
脂ののった秋刀魚やきのこ料理など、
食欲の秋に旬の食材に合わせて、「ひやおろし」を愉しんで下さい。

「しぼりたて」とは

伝統的な酒造りをする酒蔵では、昔ながらに冬の寒いさなかにお酒を仕込む寒造りが行われます。

秋に獲れたばかりの新米で仕込まれた新酒が、次々に出来上がります。この出来立て・搾りたてのお酒をそのまま瓶詰したお酒が新酒「しぼりたて」です。
出来立てのフレッシュ感を大切にするため、火入れをせずに生酒のまま瓶詰します。冬本番から、春めくころまで楽しめる、寒い時期の旬の味わいです。
「しぼりたて」の魅了はフレッシュさ。熟成された味わい豊かな秋のお酒「ひやおろし」とは対照的な味わいです。
弾けるような若々しく、荒々しくもある味わいで、それでいて清々しく甘く華やかな香り

この生酒特有の香りは加熱処理や時間の経過で飛んでしまう、とても繊細な香りです。
寒い時期ならではの味わいを冷たくしてお愉しみ下さい。